PFOS とは日本語ではペルフルオロオクタンスルホン酸と訳されるフッ素を含む有機化合物で、ピーホスと呼ばれます。2009 年に残留性汚染化学物質に関するストックホルム条約における規制対象物質に指定されました。有機フッ素化合物は通常の有機化合物と比べて、大きく異なる物理化学的、生化学的性質を持っているため、1938 年にテフロンといったフッ素樹脂が登場して以降、抗がん剤や抗菌薬まで幅広い分野で使われています。

PFOS ってこんな感じの構造です。

PFOS はたいへん安定な物質であるため、使用された後環境に残留するために生物の体内にも入り込んでいます。多くの環境汚染の研究者が環境中や生体中の PFOS について調べています。いくつか共同研究を行っていた中で pfos.jp というドメインを取得していたのですが、共同研究が終わった後休眠状態だったので研究室ホームページとして復活させることにしました。

フッ素はファン・デル・ワールス半径がすべての元素の中で水素に次いで小さい元素です。炭化水素の鎖に様々な元素が入ることで多様な有機化合物が作られますが、例えば鎖中の水素が全て大きな原子に入れ替わると分子の構造にひずみが生じ、その分子は分解しやすくなります。これがフッ素の場合はひずみがないわけではありませんが、ちょうどフッ素原子がぎっしりと炭素の鎖を守るように空間を埋め尽くすようになり、化学的な反応性が下がります。炭素とフッ素の結合解離エネルギーが他の単結合に比べて大きいこともあり、炭化フッ素鎖を持つ化合物は極めて安定な性質となります。

さらに、フッ素は電気陰性度が最も大きな元素です。化学物質の性質は原子の一番外側にいる価電子によって決まりますが、他の分子と接する可能性のある炭化フッ素鎖の外側にいる価電子はフッ素の電気陰性度が高いために、強く原子核に引き寄せられており、自由に動けなくなっています。このため、他の分子と相互作用しにくく、結果として撥水・撥油性、低摩擦性を示し、フライパンやアウトドア用品からスキーワックスまで幅広い用途に使われていました。

炭化フッ素鎖は疎水性が高く、炭化水素鎖以上に揮発性も高いものです。これをカルボン酸やスルホン酸などの極性基に結合させたものが PFOA や PFOS です。分子内に非極性(疎水性)の構造と極性(親水性)の構造を合わせ持つ物質は界面活性剤と呼ばれます。極性基の方は様々な化学反応を起こすことができますので、こちらに様々な化学修飾を施すことで非常にバラエティ豊かな化合物が作られました。界面活性剤には発泡性もあり、フッ素系界面活性剤にはクロロホルムすら発泡させるものもあります。安定な分子であるフッ素系界面活性剤は火災の際の泡消火剤にも使うことができます。環境汚染の研究者はどのような化合物が使われているのか今でも把握しきれていません。