X500 を使っていると、たまにじわじわスペクトルが見えなくなるという症状に出くわすことがあります。
ESI の極性を Pos → Neg に変更すると、Neg で瞬間的にマススペクトルが見えるようになりますが、次第にまた何も見えなくなります。Neg → Pos にするとまた瞬間的に見えるんですよね。ESI ではスプレーしているエレクトロードとオリフィスの間には正イオンモードの時 5500 V という高電圧がかかっています。 どうやら、この領域が汚れていると、汚れに電荷がたまることが起こるようです。大気圧と高真空の境界であるジェット領域が天然のコンデンサーになってしまい、イオンに別の電圧をかけてしまうという。汚れが帯電していないうちはイオンが普通にこのジェットを通り抜けるのですが、汚れが充電されるとイオンの通過を妨げるようになります。ですが、極性を入れ替えると溜まった電荷が放出されるので、またイオンが見られるようになるものの、また逆に帯電するとそのうち、イオンの通過を妨げるようになる、と。なので、極性を入れ替えると汚れコンデンサーが充電されるまではイオンが検出できるということのようです。
となると、もう QJet まわりの洗浄しかないですね。電源をおとして、真空開放。
カーテンプレートを外すと、オリフィスが姿を現します。斜め、左上と右下にあるレバーを押すと、真空開放されていればオリフィスプレートが外れます。
QJet が見えました。これは固定されているわけではないので、引き出すだけで取り外せます。向きはちゃんとあって、後部にある団扇みたいなパーツのネジが手前にくる方向が正しい向きです。
QJet 取り外したところ。メタノールでばしゃばしゃ洗います。団扇みたいはパーツ(InterQuad 0)は後部にいます。
精密ドライバーで外します。
これ、外せますが、取り付ける向きは逆向きでもつけられるんですよね。ですが、逆向きでつけてしまうと QJet を本体に正しく入れられなくなります。InterQuad 0 は四重極の模様に汚れがついています。メタノールをしみ込ませたキムワイプやスワブでふき取ります。
スワブを2つビニールテープでくっつけたもの。
QJet のいた位置の奥に、Q0 が見えていますが届きません。そこで、長くしたスワブを使って
Q0 の四重極の奥をふいてやります。ごしごし。これで立ち上げると、マススペクトルがじわじわ見えなくなるという症状はなくなりました。